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漕ぎ着ける

日記
11 /30 2016
面会に行きおかあさんと声をかけると母はぼんやりと目を開けた。

顔を拭き髪をとかし両手のグローブを外し手をさするのがルーティン。
母はどこか遠くを見ながら「あなた、田舎はどちら?」と聞く。
あれれ?私がわかっていないのか。
「身内はいるの?」とさらに聞くので母と息子と妹がいると答える。
「お父さんお母さんは?」とさらに聞くので父の名前と母の名前、妹、息子の名前を言うと母の表情が変わる。
父の名前を言い知ってる?と聞くとしばらくして「…気難しい人」とポツリ。
そうそう。ワタシはその人の娘だよと言うとまたまた母の表情が変わる。
おかあさん。私はあなたの娘だよと言うと「…あぁそうか」と母。
ここまで来るのになんと時間のかかることか。
やっと漕ぎ着けた。そんな感じ。

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母、わらう

日記
11 /29 2016
病院に行くと看護師さんが朝からご機嫌でよく声が出ていますよと言う。

近づいて声をかけると「わぁ久しぶりやね」と言うのでえ~昨日もきたよと答えると「へ~そう?あはははは~」と母。
「ここも長いからなぁ」「10年はおるやろ」と言うのでいやいや3カ月ほどだよと答えるとまたまた「へ~そう?あはははは~」と母。
軽~く否定されても全くめげずに今日の母は喋る喋る。
さらにぷーっと噴き出すように笑い始め今度は大きな声であはははは~っ。
「ここ、おもしろいところやなぁ」とニコニコ顔の母。
認知症の人がまるで別人になることはよく聞く話だが母も例にもれず浮き沈みが激しい。
母の場合、沈んでいる方が圧倒的に多いのでへらへらしているのは珍しい。
何がそんなにおかしいのか。
私にはな~んにも理解できないがなんとなくつられてあははは~と笑ってみる。
同じわからないならこんなふうに明るいほうが救われる気がする。

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うらはら

日記
11 /28 2016
病院に行って声をかけると母はパッと目を開け私をじ~っと見ている。

どうしたのと聞いてみるとずいぶん間があったがゆっくり母が話し出した。
「お母さんからは言わないことにしたの」「もう来ないでしょ」「言わんほうがええでしょ」
どうやら母はだれかに会い何かを話した気になっている。
そうだね~と答えるとしばらくして「…もうええわ」と母。
どうも母が期待する答え方ではなかったらしい。
それからも母は「いろいろ言うたって仕方ないもんなぁ」「どうもこうもないわ」と投げやりな言い方をする。
母が入院して身も心も楽になったと言ったがこんな時は気持ちが揺らぐ。
母をわかってやれないのに母のこれからを私が決めていいのだろうか。
昨日と今日、うらはら。

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おっしゃる通り

日記
11 /27 2016
母が入院したと話すと楽になったでしょと言うのは介護経験のある人たちだ。

おっしゃる通り。
起きている間はもちろんだけど寝ている間も起こされたりするし
私の言うことは理解できないし母の言うこともわかってやれないし
お金の話になると私が勝手に持ち出したとか誰かに狙われているとか被害妄想がひどくて
TVを見ていると状況判断ができなくなくなって
野球を見ていたら観客全員に見られていると言い出し
歌謡番組を見ていたら次は自分が歌う番だとか下手だから断ってと懇願したり
新聞や雑誌を破りだしたり家中をうろうろして鍵を開けたり閉めたりするのは延々続いていたし
入院したことで全部解放されたのだから楽になったことこの上ない。
介護を経験した人たちはそこをわかってくれるのだ。
ひょっとしたら私も微笑みながら入院しましてと言っていたのかも。

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眉間にしわ

日記
11 /26 2016
病院に行くと母はぼんやりしているが起きている…みたい。

グローブを外すと母の手はグーとパーの中間くらいの握り方だが力が入っていて指が反っている。
そっと手を取ろうとすると「いったぁぁぁい」と母。
力が入ったままで握るのも開くのも痛い痛いと騒ぐ。
これまでも指先が痛むことがあったがだんだん範囲が広がっている。
どうしてそうなるのかと聞くと寒くなってきたからではと看護師が言う。
ずっと手をさすっていると徐々に指が伸びてくるが痛みはあるらしい。
さすっているうちに手首を少し曲げたらポキッと音がした。
すると「あいたたたた~」「今ポキッていったよ。ポキッて」と何事も大げさな母が騒ぐ。
今日は眉間にしわが寄っているし何をしてもご機嫌が悪い。
「今が一番苦労してるやん」「あ~落ちてくるわ~」
こんな日は長居してもいいことはない。帰ろう。

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100日過ぎて

日記
11 /25 2016
母が入院してから100日が過ぎた。

氷枕を抱えていることはほとんどなくなり治療することももうないようだ。
首にある点滴の管を引き抜かないよう指のないグローブを1日中していて私が見守っている間だけ外すことが許されている。
グローブを外すと母はよろよろと震える手を点滴の管に持って行こうとするので阻止する。
テープで固定されているところがかゆいらしいが掻くことはできない。
そこには管があるからねと言うが返事はなくまた同じことをしようとする。
何度か繰り返しているうちにあきらめるのか忘れるのかやめるが今度は布団をほんのちょっとずつ手繰り始める。
指先が震えていて何かを探しているような動きで布団をつまみ持ち上げて手前に引いていき胸元に集める。
で、どうするかというとそれで終わりだが母の手は休むことなくよろよろふらふらと私の手や自分の腕までつまもうとする。
何をしているのかと聞いても多分わからないので何も聞かずただただ見ている。
母はぼんやりどこかを見ながら何も言わずただただ何かをつまもうとしている。

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世の中の認識

日記
11 /18 2016
叔父たちの見舞いが一通り終わったので肩の荷が下りた。

離れて暮らしている母の身内に少しでもわかる間に会っておいてほしいと思っていたのだが予想以上の反応の良さにちょっと早すぎた感も。
見舞いを終えた下の叔父が徘徊がなくてよかったなぁ。徘徊は本当に大変だよなと言ったが排泄や入浴の介助や同じことを何度も聞かされたりあらぬ疑いを持たれたり夜中に起こされたりするそんな大変さには気づいていない。
下の叔父は次男で介護経験がないので世の中で話題になっていることばかりに気が行くのだろう。
家の中でも結構大変なのよと言っておいたが果たしてわかったどうか。
みんながみんな介護を経験するわけではない。
所詮世の中の認識もこんな程度なんだろうなとふと思う。

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記憶の彼方

日記
11 /17 2016
月に一度帰宅する妹。

迎えに行くと早速母の見舞いに行くと言うので病院に連れて行く。
障害のある妹はこれまで母とべったりで親不孝な私とは比べ物にならないくらい可愛がられていたのだから母の記憶の順番が妹>私であるのは仕方のないこと。
ところがおかあさ~ん、かえってきたよ~と妹が手を伸ばしても何?みたいな母。
ほら娘だよ。待っていたでしょと何度か言うとやっとああそうかと反応する。
物忘れ外来を受診した時に名を聞かれ結婚前の名前を答えた母。
医師が記憶が過去に戻っているのだろうと言っていた。
生まれた所は答えられるのに今住む場所がわからないのはそういうことなのか。
ならば娘など存在しない。
叔父たち>伯母たち>幼いころの友達>父>妹>私
どうやら記憶の彼方にどんどん追いやられていくようだ。

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弟のちから②

日記
11 /16 2016
叔父夫婦が遠路はるばる母の見舞いに来てくれた。

わかるかぁ?と叔父が覗き込むと「わかる、わかるよ~」とはっきり言う母。
叔父が来ることは何日も前から何度も何度も話していたが聞いては忘れ聞いては忘れ覚えている様子など微塵もなかった母。
なのに叔父の顔を見たとたん母はにっこりと微笑んでいる。
いや微笑むどころかえへへへへ~と妙な笑い方もしている。
母には弟が二人いるがこの叔父は下の弟で歳が15離れているからかとりわけ可愛いいらしい。
誰とも話したがらなくなっていた母が唯一電話をしたいと言ったのもこの弟だ。
傍にいた叔父のお嫁さんにまで「いや~きれいになったなぁ」「外でおうたらわからんわぁ」と調子のいいことまで言う。
そんなに悪くないやん。お世辞も言うたでぇと叔父は驚いていたが私の驚きはそれをはるかに超えている。
あまりの反応の良さに改めて弟の力はすごいというしかない。

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師長の巡回

日記
11 /15 2016
面会に行くと母はあいかわらずぼんやりしている。

話しかけベッドをギャッジアップするとちょろちょろっとなにやら話し始める。
状態としては中の上といったところだ。
ここ何日か看護学校の学生が実習に来ていて病院はにぎやかになっている。
いつもならちゃっちゃっちゃ~っと見事な速さでやることをやってお愛想もそこそこに去っていく師長が実習生を数人引き連れて各病室を回っている。
今日は実習生にいろいろお話してくださったんですよ~。
言葉から京都の方かとお聞きしたら四国のお生まれだそうですね~と師長。
おいおい。母はもう1カ月以上この病棟にいるのに初めて聞いたんかいと言いそうになるところをそんなお上品に見えますでしょうかと答えた。
母は会話がわかっているのがフフフと気味の悪い笑い方をする。
こんなところでも外面の良さを発揮する母にわずかな可能性を感じる。

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uncha

認知症の母を見守りながら生きています